インプラントとタバコ - 喫煙の悪影響/治療失敗を招くことも

治療の失敗を招く!インプラントにタバコが与える悪影響

タバコを吸う人

インプラント治療の失敗の原因には、治療を担当する医師の技術・経験や医院の設備に関わる問題も挙げられますが、患者様ご自身の生活習慣も大きく関係しています。そして、中でもインプラントに悪影響を及ぼすとされているリスクファクターがタバコです。

実際に、非喫煙者と喫煙者の両者を対象にインプラント治療の成功率を比較したピーター・K・モイ博士の研究によると、全体の失敗率が5.92%であるのに対し、喫煙者の失敗率は11.28%と、喫煙者はインプラント治療の失敗率が明らかに高まるという研究結果も報告されています。

インプラントは高額な治療費と時間を必要とする治療ですから、「せっかく治療を受けるのであれば、インプラントの寿命をより長持ちさせたい」と考える方がほとんどなのではないでしょうか。

今回は、インプラントにタバコが及ぼす悪影響について詳しく解説していきます。インプラント治療を検討されている喫煙者の方は、ぜひ目を通してみてください。

タバコはインプラントの失敗要因である歯周病を引き起こします

タバコの煙にはおよそ4,000種類もの化学物質が含まれており、その中の約200種類は人体に有害な物質、約70種類はがんを引き起こす物質とされています。
これらの有害物質が呼吸器系・循環器系の疾患やがんなどの病気を引き起こすのですが、喫煙は歯周病を引き起こす大きな一因でもあります。これは、タバコのニコチンや一酸化炭素の作用によって、歯周組織がダメージを受けてしまうためです。

そして、歯周病はインプラントの失敗を招く要因のひとつです。そのため、インプラント治療を受ける前には歯周病の治療を優先し、歯周病の危険因子であるタバコを控える必要があります。

なお、タバコによる歯周病のリスクが高まるのは喫煙者だけではありません。副流煙を吸い込むことによる受動喫煙や、喫煙後に残留した煙から有害物質を吸い込むことによる三次喫煙においても、そのリスクは高まります。

タバコはインプラント周囲炎の感染リスクが高めます

インプラント周囲炎とは、インプラント治療を受けた後、インプラントやインプラントを支えている顎骨に炎症症状が起こる病気です。治療後のアフターケアの怠慢、噛み合わせ調整の不備、糖尿病なその全身疾患など発症原因は様々ですが、タバコもインプラント周囲炎の一因として考えられています。

インプラント周囲炎が進行すると、インプラントの脱落や全身疾患の発症・悪化を招く危険性があります。放置していても症状は悪化する一方ですので、早めに適切な処置を受ける必要があります。

タバコはインプラントの骨結合を妨げます

毛細血管を収縮させるニコチンや酸素の運搬を妨げる一酸化炭素の作用から、喫煙はインプラントの骨結合にも悪影響となる場合があります。骨結合がしっかりと行われないと、インプラントが安定せず、脱落してしまうといったトラブルにもつながりかねません。
また、ニコチンや一酸化炭素はインプラント手術後の傷口にも影響を与え、治りを遅くさせます。

インプラントの失敗だけじゃない!タバコによる悪影響

喫煙による歯への悪影響は、インプラントの失敗や歯周病の発症だけにとどまりません。タバコによる歯周組織へのダメージは、若い年代の方にも現れます。

  • 歯肉へのメラニン色素の沈着
  • 歯への着色
  • 口臭

喫煙による歯肉や歯への着色はセルフケアのみで改善することは難しいです。また、喫煙で歯周病を発症している場合には、口臭が強くなることもあります。

インプラント治療を受ける方は禁煙をおすすめします

禁煙マーク

インプラントは適切な治療やケア、定期的なメンテナンスを行うことで長く良好な状態を保つことができますが、タバコはインプラントに悪影響を与えます。
「術後1~2週間」「術後1ヶ月間」など治療中に医師から指定される禁煙期間の厳守はもちろんですが、タバコが歯に与える影響やインプラント再治療となるリスクを考えると、インプラント治療を機に禁煙することが最も望まれます

しかし、禁煙するには、タバコがやめられない原因である「心理的依存(習慣)」と「身体的依存(タバコへの欲求)」という2つの依存を克服する必要があります。
禁煙すると頭痛やイライラ、身体のだるさなどのニコチンの離脱症状が現れるなど、本人の意思だけで禁煙を成功させることはなかなか難しいものです。喫煙者の方は禁煙外来を利用するなどして、今後のインプラント治療に向け、少しずつでもタバコの本数を減らしていくことをおすすめします。